新しい暮らし、ここから。 clasico

お知らせ
モデルハウス見学 カタログ お問い合わせ

モデルハウス MODEL HOUSE

造園家 荻野寿也 氏
野村建設 井上哲志
建築家 伊礼智 氏

CROSS TALK 「くらしこの家」ができるまで 伊礼さん・荻野さんとの出会い、協業のストーリー

野村建設代表の井上哲志が 「これからの住まいづくり」を模索する中で 出会った建築家の伊礼智さんと 造園家の荻野寿也さん。
「ぜひおふたりとコラボレートしたい!」 という熱い思いから 新ブランド「clasico(くらしこ)」を立ち上げ、 2004年に一棟目の モデルハウス「くらしこの家」が誕生しました。

そして、構想からおよそ5年。 2018年11月に二棟目の モデルハウス「くらしこの家ハナレ」が 完成したのを機に、 クロストークが実現しました。

「くらしこの家」は
4年越しに完成したプロジェクト

弊社代表井上哲志(以下、井上) 「くらしこの家」の隣に「くらしこの家ハナレ」を建てて、子世帯と親世帯の楽しくて心地よい暮らしを提案する分棟型2世帯住宅のモデルハウスプロジェクトが完成しました。改めて2棟をご覧になっていかがでしょうか。

伊礼智氏(以下、伊礼氏) 足かけ4年のプロジェクトでしたね。2棟を一度につくってしまうより、時間を置いて1棟ずつつくったことで、おもしろい作品ができたと感じています。子世帯と親世帯のそれぞれ独立した住まいを、荻野さんがお庭でうまくつなげてくださいました。私の設計はふだん、シンプルな四角い家が多いんです。でも、「くらしこの家」は、荻野さんが腕を振るいやすいように、あえて凸凹としたつくりにしました。

荻野寿也氏(以下、荻野氏) ありがたいお言葉ですね。「くらしこの家」は中庭がポイントになっているのですが、今回ハナレが完成してアプローチが豊かになったぶん、奥行きが生まれて、全体的なバランスがより良くなったと思います。伊礼さんの建築は、その場所ならではの景色のいいところを切り取って開口部を設計されるので、植栽が入れやすいんですよ。「くらしこの家」の場合は、柿畑の風景や遠くに望む山の稜線が美しい。それらの眺めを邪魔しないような植栽を考えて、山桜やアオダモなどの花が咲く高木を入れました。春になったらぜひ、屋上テラスでお花見を楽しんでいただきたいです。

井上 野村建設の新ブランド「clasico(くらしこ)」誕生のきっかけは、今から5年ほど前に「おふたりと協業させていただきたい」と考えたことでした。当社は創業からずっと、断熱や気密にこだわった高性能な家づくりを行っていますが、その分、どうしても価格が上がってしまいがちです。大切な性能は守りながら引き算をすることを考えたとき、共感したのが伊礼さんの「小さな家で豊かに暮らす」という設計手法と、伊礼さんの建築をより魅力的に見せる荻野さんの造園でした。

伊礼氏 実を言うと、協業のお話をいただいた時、はじめは実現が難しいかもしれないと思ったんです。プロポーションや空間のバランスを重視する私たち建築家にとって、「高性能」は一番遠い立ち位置にあるものだから。でも、お会いして対話を重ねる中で野村建設さんの熱意や本気度を感じましたし、私の住まいの設計上、必要になる断熱パネルのサイズオーダーにもご対応いただけることになって(※伊礼氏の設計は標準の天井高を低めに抑えるのが特徴)、心が動きました。断熱パネルの製造工場で気密性の実験を見せていただいたことも大きかったですね。それまで住宅は、少々すき間がある方が風通しがいいと思っていましたが、気密性能が悪いと換気効率も悪くなるという事実を目の当たりにして、「性能とデザインの両立」に本気で取り組みたいと考えたんです。

井上 野村建設との協業は、伊礼さんにとっても新たなチャレンジになったということでしょうか。

伊礼氏 そうですね。実際、「くらしこの家」のUA値(断熱性能を表す数値)やC値(気密性能を表す数値)は、従来の僕の設計ではありえない高さです。

井上 UA値が0.42W/m²・k、C値が0.2cm²/m²です。

伊礼氏 開口部がフルオープンにできながら、その数値が出るのは本当にすごい。かつて私が先生から学んだ「気密はほどほどでいい」という教えは正しくなかったわけです。

地域の「いい家」「いい庭」づくりを
伝授する伊礼氏と荻野氏

井上 伊礼さんと荻野さんは多くの協業作品を手がけていらっしゃいます。伊礼さんから見た荻野さんの魅力、荻野さんから見た伊礼さんの魅力をぜひお聞かせください。

伊礼氏 僕の設計を、こう評している方がいます。「開口部と家具しかない。それがいい。余計なところにデザインを加えず、開口部と家具が一体となって外に開いており、建具を閉じれば性能がきちんと出て、開ければ外とつながる」。これは、僕の設計姿勢を正しく表しています。おのずと外部を取り込む志向があるので、そこに荻野さんの自然の中にいるような気持ちのいい造園があることが、私にとってとてもありがたいのです。

荻野氏 伊礼さんの建築は、たとえ広い土地であっても小さくまとめていて、たたずまいが優しいところが魅力ですよね。私は里山の原風景を再現したいという思いを作風に込めているので、そこが伊礼さんの建築と相性がいい理由なのかなと感じています。先ほど、井上さんが協業のきっかけとして「小さな家」をキーワードに挙げていらっしゃいましたが、私が伊礼さんの建築に惹かれた理由も同じでした。

井上 ところで、伊礼さんと荻野さんの協業はどのようにして始まったのでしょうか。

伊礼氏 きっかけは、7年ほど前に、東京藝術大学の同級生で建築家の渡辺康さんから「すごい造園家がいるんだ」と教えていただいたことでした。作品の写真を見たら、真っ白な壁にアカマツが2本、斜めにすっと植えてある。ものすごい衝撃を受けて、荻野さんて一体どういう方なんだろうと興味を抱いたんです。その後、京都でお会いする機会があって、ぜひ一緒にお仕事をということになりました。

荻野氏 協業作品は通算で30件ほどになりますね。伊礼さんが主宰されている「住宅デザイン学校(※伊礼氏の価値観に基づく、設計力アップのためのスクール。野村建設の設計士も参加しています)」の講師を拝命しているご縁で、全国各地の工務店さんからも仕事をいただくようになりました。

井上 伊礼さんと荻野さんは、私たちのような地方工務店にも技術やノウハウを惜しみなく伝授してくださいます。

伊礼氏 私が尊敬する建築家の吉村順三先生は「施工者は仲間だ」とおっしゃって、彼らをとても大事にしました。建築家にとって、施工者は先生でもあります。私自身も社会に出たばかりの頃、お世話になった工務店さんから本当に多くのことを学びました。ですから、私が工務店さんと一緒に仕事をするのはごく自然なことなんですよ。互いに信頼し合って、それぞれの力を最大限に発揮できるのが理想だと思っています。

いいものは外部からやって来る。
住まいと庭の心地よい関係

井上 唯一無二の世界観を放つ伊礼さんの建築と荻野さんの造園のルーツについてお聞かせください。

伊礼氏 私のルーツはやはり吉村順三先生ですね。吉村先生の、簡素にして品格がある建築に憧れて設計の世界に入りましたから。手数を増やしていいものをつくるのではなく、いかに手数を減らし、素朴だけれど品があるものをつくるかが私の設計テーマ。そして、そのあたりが荻野さんの造園思想とも通ずるんじゃないかなと思っています。

荻野氏 私は工業高校の建築科で学んだのですが、やはり吉村順三先生の大ファンで、先生の作品集を繰り返し見ながら自分なりに研究していました。造園の道に入ったのは、32歳の時に、建築家の坂本昭さんに自宅の設計を依頼したのがきっかけ。庭にもこだわりたくて、吉村先生が好まれた雑木の庭をある造園家の方に再現していただいたのですが、「ちょっと違うなあ」と思うところもあって、少しずつ自分の理想の庭に改造していったんです。そうしたら、坂本さんから造園の仕事をいただくようになって、だんだん他の建築家の方ともつながっていきました。ですから、私のルーツも実は吉村先生なんですよ。

井上 今回、造園をワークショップ形式でお願いして、参加者の方々と一緒に楽しみながら、建築と庭の心地よい関係を再認識することができました。

伊礼氏 かつて、哲学者の野矢茂樹さんと座談会でご一緒させていただいたことがあります。「それぞれの分野の豊かさの新基準」というテーマだったのですが、その時、野矢さんのおっしゃった言葉が今でも忘れられません。「設計って、外部をどれだけ取り入れるかでしょ」。一瞬きょとんとしてしまいましたが、設計をひと言で明確に表している名言です。外からやって来るいいものを取り入れて、必要でないものは取り入れない、を制御できることが設計であり、私が開口部に力を注ぐ理由もそこにあります。

荻野氏 樹木や植栽を通じて生まれる会話、外壁に映る樹木の影、リビングダイニングに入ってくる木漏れ日、匂い、音、葉の揺らぎといった心地よさはやはり、造園あってのものです。庭をつくると管理が大変と思われがちですが、決して難しくないし、やってみたら案外楽しいもの。そうしたことを、野村建設さんはワークショップを通じてお施主さんたちに伝えようとされていて、すばらしいと思います。今回のワークショップでは、目を輝かせながら土に触れるお子さんたちの姿がたくさん見られて、私も感動しました。これからもっともっと「庭付き一戸建て」「地方暮らし」を選ぶ方が増えていくことを願っています。

伊礼氏 初めから建築や造園のことを理解しているお施主さんはほとんどいません。ですからぜひ、井上さんの持ち味である「伝える力」や野村建設さんのチーム力を発揮して、いいお施主さんを育てていっていただきたいですね。住まい手が育てばおのずと、いい設計、いい施工ができるという好循環が生まれます。

井上 伊礼さん、荻野さんから教えていただいたことは数知れません。それを社内に落とし込み、地道に伝えながら共感してくださるお施主さんを増やしていくことが、これからの私たちの使命だと思っています。今後ともご指導よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

プロフィール PROFILE

建築家
伊礼智 氏 Irei Satoshi

1959年沖縄県生まれ。82年琉球大学理工学部卒業後、東京芸術大学美術学部建築科大学院を修了。丸谷博男+エーアンドエーを経て、96年より伊礼智設計室開設。日本大学生産工学部建築工学科「居住デザインコース」非常勤講師。

ブログ : ireiblog
主な著書 : 『伊礼智の「小さな家」70のレシピ』(発行:エクスナレッジ)

造園家
荻野寿也 氏 Ogino Toshiya

1960年大阪生まれ。1999年に自宅アトリエが「第10回みどりの景観賞(大阪施設緑化賞)」を受賞。以降独学で造園を学ぶ。2006年、設計部門として荻野寿也景観設計を設立。2013年長野県松本市景観賞受賞。原風景再生をテーマに造園設計・施工を手がける。建築家との協働多数。

ウェブサイト : www.o-g-m.co.jp

BACK
MODEL HOUSE
© NOMURA CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED.